あいまいなねむりのなかで

ときめくかときめかないか

空浮かぶ僕の雲

近所のスーパー、安いし品揃えも良くて、他であまり見かけないお菓子とか魚の缶詰とかカップ焼きそばとか売っていて好きだった、この前、買いに行こうとしたら閉店していた、去年末までだったようで、知らなかった、ちょっとショックだった、こうやって僕の生活は少しずつ変わっていくんだと思った、中学生の頃、遊戯王カードが流行ってて、僕は狂ったようにレアカードを集めていた、5枚入りで売ってるカードの袋を並べて側面を見ると印刷がズレてるヤツにレアカードが入ってる、それを探す行為をサーチってみんな呼んでた、1袋150円で買ってはその場で開封し、1番後ろにレアカードが入ってるかどうかのスリルを楽しんだ、僕の場合はカードそのものやデュエルとかよりサーチが楽しかったからハマっていた、遊戯王カードは同級生の中で共通の価値あるものって感じで、レアカードを持ってるやつが偉かったのだ、あの頃によく買いに行ってた店、ゲーム屋とかおもちゃ屋、今はもう全部無くなった、変わっていく、何もかも、町が再開発するようで、線路の近くの建物がみんな立ち退き、異様な感じになっている、昔そこにあったゲーセンの事、誰か覚えているだろうか、また中学生の頃、格闘ゲームにハマっていた、ストリートファイター、キングオブファイターズ、大好きだった、学校でルガールのジェノサイドカッターを友達がよくやっていた、格闘ゲームは小学生の頃から家庭用では遊んでいたのだが、中学に入ってからはゲーセンでもやるようになって、まあゲーセンは不良の溜まり場だと思っていたから、入るのに最初は勇気が必要だった、ゲーセンの台はアーケード用のレバーとボタンで家庭用のコントローラーとは操作感が違う、あれを握ると血が騒いだ、店内は薄暗く煙草臭く音もうるさい、ガラの悪い連中もいる、家とは全く違う雰囲気で、何より反対側の台から他人が乱入してくることもあるスリル、対戦格闘ゲームの掟、敗者は席を立つ、ここは戦場なのだ、家庭用のヌルいコンピュータ戦しか知らなかった僕は、そんな世界に徐々に魅了され、通いまくるようになる、もっともその頃の僕は対戦台は怖かったので、一人用の台でストーリーモードをやっていた、対人戦にハマるのはもう少し後の話なのだ、ゲーセンのおじさん店長とは顔見知りになっていた、当時から人見知りだった僕は話して仲良くなるとかはなく、ただ黙って通っていた、対人戦を眺めたり、一人用をしたり、楽しかった、ゲーセンの強い引力に引き寄せられた、そんなある日、ゲーセンは18歳未満は18時までしか居られないのだが、僕は時間を過ぎても帰らずにいた、時間を忘れていたのだろう、いつもは帰る時間、時計は18時40分、一線を超えてしまってドキドキした、そしたら店長が話しかけてきた、どれか好きなの1回プレイさせてあげるから帰りなさい、みたいな事を言われた、僕は迷いに迷ってマーヴルスーパーヒーローズvsストリートファイターを選択、店長はゲーセンの台を鍵で開けて、1クレジット入れてくれた、そして僕はストーリーモードをやり、たしか途中で負けた気がする、終わって店長に礼を言ってゲーセンを出た、帰宅中、ものすごく心が踊って、めちゃくちゃ嬉しかった、この出来事は30歳になった今でも覚えている、その後、僕は高校生になり、線路沿いのゲーセンもいつのまにか無くなってしまい、他のゲーセンで対人戦に明け暮れるようになる、その話はまた今度書こうと思う、色々なものを失って進んでいくのが、とても寂しい、抗うことはできなくて、受け入れて流れ続ける人生だ、絵を描いてどうなるんだろう、誰かの心に印象を残したい、あのゲーセンの店長の事を今でも僕が覚えているように、誰かの心に突き刺さるようなものを作りたい、毎日毎日すごい早さだよ、恐ろしいんだ俺は、何か残さなきゃいけないって強く思う、焦っちゃいけないとはわかっているけど、今は難しい、とにかく自分の感情が動いた事実を伝える為に一生懸命やるよ、それがすごく大事な気がするから